宝箱

すきの定義は「心を動かされる」こと

松倉海斗という小宇宙〜Summer Paradise 2020〜

うっかり宇宙旅行に行ってきました。

 

この夏Jr.により繰り広げられているSummer Paradise。先日セトリにPumpkinが入っているのを見てまんまとうみんちゅの公演を見たばかり。そう、ちょっとの興味と時間さえあればライブを見れてしまうのが配信ライブの利点であり、罠とも言える。その時点で「公演時間に家にいる8月8日(松倉回)と10日(宮近回)は気をつけなければ……」と思った矢先のことだった。

〜30分後〜

松倉さんの歌に出会ったのは去年の5月。ジャニーズ IsLAND Festivalで披露された雪白の月。以前からトラジャ担の友人からいろいろと話は聞いていたけれど、そもそもJr.に興味を持ち出したのが去年の頭、当時からダンスのイメージが強かったトラジャにこんな風に歌う人がいるんだと驚いた記憶。

というわけでわたしは軽い気持ちで踏み出した先で、その宇宙に引き摺り込まれることになる。

 

松倉さんは今回のソロコンについてこう話している。

8月8日担当させていただきます松倉です。僕は全編通してちょっと作品にしたいなと思っておりまして、ストーリー性とかメッセージ性のあるライブにしたいなと思っているので、まあライブですけど、ちょっと映画みたいに見てもらえたら嬉しいなって思います。

ラブストーリーとかじゃないです。深く言いますと、あ、深く言うとネタバレになっちゃったらダメだけど(こける仕草をする吉澤さん)、僕らの目指す夢っていうのが海外進出とかそういうのをでっかく掲げているので、その道中というか、そういうものをセリフじゃなくて、ちょっと表現で表したいなって思います。

ライブというより、たしかになんとなく映画やミュージカル舞台に近いものを感じた。ほぼ間違いなく、伝えたいことのために曲を選んでいるし、それがすごくわかりやすく歌詞から伝わる。彼の描いたストーリー‪とはなんだったのか、わたしにはこう見えたという話をする。

 

宣誓(現実)

LIFE〜目の前の向こうへ〜(関ジャ二∞)
自分のために(TOKIO)

OPから2曲はスタンドマイクの前に立ち一人で歌った。特出した演出はなく、歌のみで魅せる。このパートは起承転結の「起」であるし、「結」につながる部分があると思う。

 

一晩のショー(夢)

夢のHollywood(Travis Japan)
Secret Code(KinKi Kids)
Street blues(関ジャ二∞)
pure(松倉海斗)

モニターに映された文字とどこからか聞こえる「お前の夢はなんだ?」「なぜ(その夢なのか?)」という問いかけから始まる「いつか僕らは夢の舞台で輝くんだ」をスイッチにして始まるのが夢ハリ。夢の舞台であるハリウッドで歌い踊るワンシーン。

夢ハリからつながるSecret Code〜Street bluesで印象的だったのが、手の振付。「秒針」で時計の針、「今夜はこのまま腕の中」で色っぽく腕の中に収める、「時計を外した」で手首から何かをふわっと外す。なんとなく、振付ではなく本人のオリジナルでやってる部分もあるんだろうなぁと感じる。彼のダンスは音ハメが気持ちいいんだけど、今回のライブの中では普段いうところの音ハメ(ガシガシ踊るダンスで音と点を合わせる)とは少し違った。流れるようなダンスの中で音と動きがリンクする瞬間がたくさんあって、それが気持ちよかった。あれはきっと感覚的にやっている。

あとあれ、ベビーフェイスなのにパフォーマンス中の色気がすごい(途中でジャケットを脱いで腕まくりをし出したのには、素直に悲鳴を上げた……)

 

苦悩(現実)

Panic Disorder(堂本剛)

曲中も含めてダンスで表現される苦悩、挫折がヒシヒシと胸にくる。炎の中かと見間違える赤(〜オレンジ)の照明に照らされたステージでPanic Disorderを踊り狂い、曲の最後はステージ上に落ちるスパッとの下にぶっ倒れる演出、よかったな……。画面越しに伝わる気迫に沈黙。

 

夏の幻影(夢)

NEVERLAND(NEWS)【少年忍者】
パラダイス銀河(光GENJI)
ジェットコースター・ロマンス(KinKi Kids)
Ho! サマー(タッキー&翼)
Kis-My-Calling(Kis-My-Ft2)

さて、ここからをどう捉えたら……?

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わからない。さっきまでガチガチにストーリー仕立てのライブを展開していたとは思えない突然のトンチキ松倉ワールド。どういうこと……?(リアルタイムでもめちゃくちゃ困惑したw) サマパラのサマパラである部分を圧縮した夢の中なのではと思うことにした(暴論) NEVERLANDで夢の国に誘われ(少年忍者がバキバキに踊っててビックリ!!!!!)、「夏といえばローラー!」という概念に取り憑かれ、アロハシャツで夏をエンジョイし、MCでは通信障害芸(突然静止した後「うそぴょ〜〜〜ん」)→謎にステージの端から端まで側転、最終的にはトラジャ(お面の姿)も出てきた。意味が分からなくてお腹を抱えて笑っていたのに、いつのまにか超たのしくなってたので松倉さんはすごい。そして変な人。ツボ。

 

自分の話(現実)

秘密(二宮和也)
手と手(松倉海斗)
街(堂本剛)

秘密は自分が初めて歌ったニノのソロ曲(ニノに憧れたことがジャニーズ入所のキッカケ)、手と手は自粛期間中に作った曲、街は落ち込んだ時や自分を見失ったときの心の指針にしている剛くんのソロ曲。

『手と手』って言うんですけど、僕のお家時間で作らさせてもらった曲です。それは本編のストーリーとは全く違う番外編で。

先述のインタビューでこう話していたので、やはりこのパートは大筋とは若干違う位置にある。

街がすごくよかったんだけど、歌い慣れたようなその曲を聴きながら、街と共に越えた夜がいくつもあったんだろうなって考えてた。

 

決意表明(現実)‬

Time(KinKi Kids)

Finally Over(A.B.C-Z)
星をめざして(NEWS)

時計の映像が歪んで始まったのがTime。彼の声とこの曲のキー・雰囲気があってて、ゾクゾクした。さっきまでとはまるで違う場所にいるよう。切ないストリングスの音がクライマックスが近いことを気づかせる。続くFinally Over。またこれがめちゃくちゃカッコいい。バックJr.である少年忍者との掛け合いがすさまじかった。引き寄せたり突き放したり一身となったり対峙したり、まるで6人グループのように組み合いながら動いていて驚いた。そしてこの人さ〜、すごい目をしながら歌うね。何度も刺された。

ここで明かされるのが冒頭から語りかけていたストーリーテラーの正体。「彼らなら乗り越えることができる」と言い切れた理由、それは「私ストーリーテラーは未来の僕だから」「未来の僕だから」から松倉さんの地声が重なって、「僕ら7人は夢の舞台で輝いている」。自信たっぷりにそう語る未来の松倉さんのことばの力強さにゾクゾクした。

そして先程までの重厚な音の先に訪れたのは静寂。星をめざしてだった。衣装は白いタキシード。歌い出した瞬間、ここでわけもわからず泣いてしまった。単純にこの曲がすきだということもあるんだけど、なんだろうなぁ。様々な感情の先に行き着いたのがここだということにグッときてしまったというか。こんなに効果的にセトリに入れられたこの曲を見たことない。あの場所で新しく息をしていた。すごくよかった、ありがとうねぇ、松倉さん。揺れるペンライトの海がまるで夜空のようだった。

一見バラバラの3曲、歌詞が出ていなかったら共通点に気がつかなかったかもしれない。「臆病で閉ざされた心は、世界は、今解けていくよ」「ここから 始まりの時 動き出す Restart 舞うよ 歪んだ空を 変えてゆく この手で...」「目覚めたら 君がいて 光みちていた ぼくは生まれ変わった」止まっていた時間がまた動き出す、自分の手で動かし始める、そういった3曲なのだ。これはほんとに外野の憶測で申し訳ないんだけど、最後のMCで「(一年前の8.8を)塗り替えるっていうよりは、思い出を更新する」(意訳)と言っていて、きっとそういう意味なんだなと。ソロコンを任された2020年の夏から、また未来に向かって力強く駆けようとしているのが痛いほど伝わってきた。8月8日が彼の日だったことに強烈な運命を感じてしまう。いつのまにかそれほどに引き込まれていたわけで。

 

エンドロール(現実)

エナジーソング〜絶好調超!!!!〜(嵐)
SUMMER PARADISE(ジャニーズJr.)

最後のMC前2曲、この短編映画のエンドロールのようだった。映画の終わりが星をめざして、そこからパッと切り替わって明るい曲。エモさを終盤まで引きずらない作り方がすきだった……。たぶん松倉さんがそういう人なんだろうな。

映画を見終わった後、「あ〜、おもしろかったな」と思いながらぼーっとしながら現実に引き戻される瞬間と似ていて、松倉海斗という小宇宙の旅からジャニーズのアイドル・松倉海斗のライブに戻ってきたような感覚がした。

 

クライマックス(現実)

Together Now(Travis Japan)

エンドロールが終わって、最後に少し映像がある映画ってあるじゃない? Together Nowはその位置づけに見えた。サマパララで終わってもライブとしては成り立つんだけど、あるかないかで印象はガラッと変わる「いま幕が降りて 今日が終わる」という歌詞で始まる曲。終わってしまうんだなぁと名残惜しく見ていて、うちわが映るモニターをじっと見てから歩き出す姿や6人がステージに現れた景色があまりにきれいで胸がギュッとした。

 

メッセージとして伝わってきたのは「決意」と「確信」。ここからまたTravisJapanというグループとして走っていくんだなと。全編通して見てなんだかとんでもないものを見てしまったというか、公演後の疲労感が配信ライブとは思えないソレで、完全に現場後のテンション。居酒屋で「あそこはあぁだった」「あれはどういう解釈?」という話をしたくなる夜でした。

振りの付け方とかステージ構成とかもそうだけど、なにより表情の大きさ、魅せ方が舞台で育ってきた人なんだなぁと何度も感じた。また松倉さんの作るステージが見たい。